聖地。
林道の薄暗く湿った坂を落ちてくると、祭壇のような棚田が現れる。
老夫婦は、まるで愛撫するかのように、鍬を入れていた。
幾年も続けられてきた儀式。
額から流れ落ちた汗は、またその肉体に戻ってきて、
彼等の肉と血になる。
生命の源。
ここは聖地。
僕は写真を写すことをためらっていた。
粛々と進められる儀式と、神聖なる土地を汚してしまいそうに思えたのだ。
車の窓越しに一枚だけ写す。そして立ち去る。
バックミラー越しに振り返ると、その儀式は休むことなく続けられていた。
まるで永遠に続けられるかのように感じた。
そして僕は、また林道の薄暗い湿った空気の中に入っていった。
(5月25日)